救急・集中治療ノート:エビデンスと経験

救急・集中治療のエビデンスと個人的なパールをまとめます

ESICM ARDSガイドライン 2023 要点

ESICM guidelines on acute respiratory distress syndrome: definition, phenotyping and respiratory support strategies | Intensive Care Medicine

 

※参考:2017からの変更点の解説 https://www.jseptic.com/journal/JC230725.pdf

 

<はじめに>

費用対効果分析は含まれていない。

 

<定義>

ベルリン定義の問題点を指摘、新たな診断基準が提案されている。

COVID-19パンデミックでHFNOの使用が増加しており、ベルリン定義で要求されているPEEP>5の条件をなくすべきではないか?一方で、予後が良好な患者も含まれることになり患者の重症度を薄める可能性があるのでは?

P/FではなくSpO2/FIO2の使用が増加している。

小児ARDS基準のように、片側の肺野の陰影も含まれるようにするのはどうか?CT画像を基準にいれては?肺エコーは?

診断までの期間は?ARDSは数日~数週間を要する症候群である。

 

<sub-phenotype>

sub-phenotypeを正確に分類することはLIVEの結果に示されるように重要である

LIVE PMID: 31399381 フランスの多施設単盲検RCT 標準的な肺保護換気を行う対照群と、放射線学的タイプ(限局性病変orびまん性病変)によってTV、PEEP、RM、腹臥位を使い分ける介入群で、死亡率の改善は認めなかった。しかし21%の患者が誤分類されており、それを除外すると結果は肯定的であった。

 

抗炎症介入について

HARP-2 PMID: 29400921 多施設二重盲検RCT ARDSにシンバスタチンを投与して有意な効果はなかった

→二次解析で、Hyper-inflammatory sub-phenotypeでは、シンバスタチンの効果がある傾向があった。

  • SAILS PMID: 24835849 多施設二重盲検RCT 敗血症性ARDSにロスバスタチンを投与して転機を改善しなかった

→サブ解析、クラスター再解析で、効果のある可能性のある患者群が報告されてはいる。

 

PEEPについて

ALVEOLI PMID: 15269312 急性肺障害・ARDS患者においてPEEPの高低で予後の有意差なし

→二次解析で、Hyper-inflammatory sub-phenotypeではhigh PEEPによって死亡率・人工呼吸器離脱期間が改善した。

LUNG-SAFE(ARDSの大規模多施設共同前向き観察研究)の二次解析でも同様のパターンが確認された。

LIVEではper protocolの患者のみ考慮すると死亡率の減少が確認された。(前述)

 

輸液戦略について

  • FACTT PMID: 16714767 急性肺障害に対して保守的水分管理戦略は死亡率を改善しなかったが、肺以外の臓器不全を増やすことなく肺機能を改善し、人工呼吸期間・ICU滞在日数を改善した。

→Hyper-inflammatory sub-phenotypeでは保守的輸液よりも自由輸液によりoutcomeが改善

 

<HFNO vs COT>

  • AHRF患者において挿管リスク減少を目的として従来の酸素療法よりもHFNOを使用することを推奨(強い推奨、中等度のエビデンス

死亡率減少を目的とした使用について明確な推奨は出せない

COVID-19も同様

  • FLORALI PMID: 25981908 多施設非盲検RCT 急性低酸素性呼吸不全でP/F 300以下の高CO2血症を伴わない患者をHFNO、COT、NPPVのいずれかに割り付けた。HFNOが有意に死亡率を減少した。挿管率に有意差はなかった。
  • これと、COVID-19の研究も含めたMAで、HFNOで挿管率の減少を認めた。死亡率には有意差なかった。
  •  
  • 挿管を予防することで長期的な症状や機能障害が減少するかどうか、HFNOをどれくらい続けるか、失敗や挿管の必要性を判断する指標などは不明である。
  • いくつかの試験ではHFNCに失敗した患者はCOTよりも死亡率が高かった。

 

<HFNO vs NIV>

心原性肺水腫やCOPD急性増悪に起因しない急性低酸素性呼吸不全において、挿管や死亡率を減少させるために、CPAP/NIVと比較したHFNOの使用の賛否を推奨することはできない

 

COVID-19患者においては挿管リスク低下を目的としてHFNOよりもCPAP/NIVの使用を提案する(弱い推奨、高いエビデンス)が、死亡率を減少させるかどうかについては推奨できない

 

CPAP/NIVを使用する臨床医は、P-SILIを回避するために適切なモニタリングを使用するべきである。

重要なエンドポイントを用いてHFNOとNIV/CPAPを比較するRCTが緊急に必要である。

 

<NIV vs COT>

心原性肺水腫やCOPD急性増悪に起因しない急性低酸素性呼吸不全において、挿管や死亡率減少のために、COTと比較したCPAP/NIVの使用の賛否を推奨することはできない

 

COVID-19患者においては挿管リスク低下を目的としてCOTよりもCPAP/NIVの使用を提案する(弱い推奨、低いエビデンス)が、死亡率を減少させるかどうかについては推奨できない

 

CPAP/NIVの最適な適応を特定する必要がある。

 

CPAP/NIVのフェイスマスクvsヘルメットインターフェイス>

挿管や死亡率減少のために、CPAP/NIV用のヘルメットインターフェイスをフェイスマスクと比較して使用することの賛否を推奨することはできない

小規模の単施設RCT1件のみ。ヘルメットの方が死亡率・挿管率が減少したが、追加研究が必要。

 

<NIV vs CPAP

CPAPと比較したNIVの使用に対する推奨はできない。

RCTなし。

 

<一回換気量>

ARDS患者の死亡率を低下させるために、4−8mL/kg PBWを推奨する(強い推奨)

COVID-19によるARDSにも適用される(強い推奨、中等度のエビデンス

MAで統計学的有意差はなかったが。

2006年以降この領域で新規研究は発表されていない

対照群の換気方法は現在においてconventionalとは言えない

 

<PEEP>

死亡率改善を目的としhigher PEEP/FIO2 strategyかlower PEEP/FIO2 strategyを用いるかの明確な推奨は出せない

 

代表研究

ALVEOLI

 LOVS

 EXPRESS

いずれも死亡率に有意差なし。

 

※2017では中等度以上のARDSにhigh PEEPを提案していた(Higher vs lower peep in patients with acute lung injury and ARDS PMID:20197533の結果を重視していた)

JSICMも高いPEEPを推奨

 

<呼吸生理学に基づいたPEEP設定>

死亡率改善を目的としてPEEP・FIO2 strategyを用いたPEEP titrationよりも呼吸生理学に基づいたtitrationを行うことに対して明確な推奨は出せない

 

代表研究

EPVent(経肺圧と低PEEP/FIO2tableを比較)

EPVent2(経肺圧と高PEEP/FIO2tableを比較)

Pintadoら(最も高い呼吸コンプライアンスを達成するように漸増したPEEPと、低PEEP/FIO2 tableを比較)

ART(長時間のRMを受けた後に最も高い呼吸コンプライアンスが得られるPEEPより2cm高くなるように調整したPEEPと低PEEP/FIO2tableを比較)→死亡率上昇

 

JSICMと同様。

 

リクルートメント手技>

死亡率改善を目的として長時間のリクルートメント手技を行わないことを推奨(強い推奨)

35cmH2O以上を少なくとも1分間維持

代表研究:ARTtrial(PMID:28973363 死亡率上昇)

全体のMAでは有意差なかったが、最も質が高いと考えられ、これの結果を重視した

 

短時間のリクルートメント手技を行わないことを提案

35cmH2Oを1分未満維持

LOVSなど

MAでは死亡率、有害事象でも有意差なし

人工呼吸器の離脱、吸引、気管支鏡、退位返還の後など向きはいが引き起こされる可能性が高い状況において、レスキュー的な役割を果たす可能性はある

「sigh」が無気肺を予防できる可能性がある(PMID:10051265、25985386)

※2017ではRMを行うことを提案していた

 

<腹臥位>

死亡率改善を目的として中等度以上のARDS患者には腹臥位を使用することを推奨する(強い推奨、高いエビデンス)COVIDー19も。

長時間の伏臥位(16時間以上)を行うべきである

代表研究 PROSEVAtrial 死亡率改善

全てのRCTを含めると有意差なしだが、大部分はこの結果に基づいている。

フランスでは軽症から中等症ARDSの成人挿管患者を対象とした試験が進行中である。

 

COVID-19関連AHRF患者では挿管回避を目的とした覚醒下伏臥位療法を提案する(弱い推奨、低いエビデンス

死亡率改善を目的としては明確な推奨を出せない

代表研究;Awake prone positioning for COVID-19 acute hypoxemic respiratory failure: a randomized, controlled, multinational, open-label meta-trial

挿管率と死亡率の複合転帰が有意に改善

COVID-19以外では研究なく、推奨はできない

 

<筋弛緩薬>

COVIDー19以外の中等症以上のARDSにおいて死亡率改善を目的としたルーチンでの筋弛緩薬投与は推奨しない(強い推奨、中等度のエビデンス

COVIDー19では明確な推奨は出せない

 

代表研究:ACURASYS 死亡率減少。low PEEP戦略、伏臥位療法併用が多い

筋弛緩投与を行わずに伏臥位療法をおこなった患者ではより深い鎮静目標と関連し、これが対照群の死亡率上昇の原因となった可能性がある。(※JSICMガイドラインでも指摘されている)

ROSE 死亡率有意差なし コントロール群で浅い鎮静管理をおこなっている。またすでに筋弛緩薬を受けていた多くの患者が除外されている。

合わせると有意差なし

筋弛緩群で気胸に対する明らかな予防効果が認められた。気胸を発症するリスクのある患者における筋弛緩薬の使用を支持するかもしれない。

 

<ECMO>

EOLIAの適格基準を満たす重症ARDS患者はEOLIAと同様の管理戦略を遵守し、定められた組織基準を満たすECMOセンターでECMOを受けることを推奨する 強い推奨、中等度エビデンス

COVIDー19にも適応(RCTはないが、同様の転帰をたどるだろうという判断)

 

CESAR ECMO群で生存率有意に増加

EOLIA 60日死亡率有意差なし

MAでは死亡率改善

 

<ECCO2R>

死亡予防を目的としたECCO2RはRCT以外では使用しないことを推奨 強い推奨

進行中のRCTの結果によってはupdateする予定

代表研究;Xtravent(PMID:23306584) VFD有意差なし P/F<150のサブグループ解析ではVFD増加することが示唆された

REST(PMID:34463700) 死亡率有意差なし 脳出血、その他の出血の増加が示唆された

ARDSガイドライン2021(日本)要点

ARDSガイドライン2021(日本呼吸療法医学会、日本呼吸器学会、日本集中治療医学会)

jsicm.org/publication/pdf/ARDSGL2021.pdf 

 

 

<NPPV>

初期の呼吸管理として、非侵襲的補助換気の禁忌や呼吸不全以外の臓器不全がなければ

酸素療法と比較してNPPV・HFNC 条件付き推奨 2B

気管挿管と比較してNPPV・HFNC 条件付き推奨 2B

 

NPPV・HFNCは ARDS患者の呼吸管理において確立した治療ではない

HFNCとMVを直接比較したRCTはなかったので間接比較

気管挿管の遅れは死亡リスクを増加させる

非侵襲的呼吸補助の禁忌には、気道の保護ができない、嘔吐のリスクが高い、意識障害、非協力的、不安定な循環動態などがある

 

日本版敗血症診療ガイドラインでは成人敗血症患者の初期の呼吸不全に大してHFNC、NPPVを弱く推奨している(酸素療法との比較)

欧米の敗血症ガイドラインには推奨がない?

欧州の集中治療医学会によるHFNCガイドラインには酸素両方と比較してHFNCを推奨している

欧米の呼吸器学会による急性呼吸不全に対するNPPV診療ガイドラインでは急性呼吸不全患者を対象とするCQがあるが ARDSに対する推奨は困難とされている

 

 

<1回換気量>

1回換気量を4〜8mL/kg予測体重に制限することを強く推奨 1B

 

日本版敗血症診療ガイドラインで肺保護換気戦略を弱く推奨

SSCG2021では全てのARDS患者において6ml/kg以下に制限し、プラトー圧を30cm H2O以下で管理することを強く推奨

※代表研究:ARMA PMID:10793162

 

 

<PEEP>

高いPEEPを用いることを条件付きで推奨 2D

 

サブグループ解析で、重症例(P/F <200)でより有用の可能性あり

一方で対照群で低PEEP・高TVが用いられている研究があり、高TVの害に影響された可能性がある。

 

プラトー圧>

プラトー圧制限を行うことを条件付きで推奨 2D

 

高 TVの害が影響した可能性がある

 

<PCV vs VCV>

推奨を決定できない(in our practice statement)

PCVにより人工呼吸器日数の短縮、死亡の減少

ただCOPD急性増悪患者を対象としたものが含まれていた

しかしVCVを用いている施設に対してPCVを推奨できるほどではない

 

<APRV>

APRVは推奨を決定できない(in our practice statement)

VFD延長、死亡減少、圧損傷の減少

しかしこの中には一般的に認知されているAPRVとは言い難いものが含まれていた(低圧相が長い)

典型的APRVに限定しても同様の結果ではあった

 

筋弛緩薬との併用が困難であることから同時に推奨はできないという議論

特定の機種でしか典型的APRVの実施が困難、習熟したスタッフが必要

Habashiの総説(PMID: 15753733)で推奨されている設定を利用したRCTは1つのみ

採用された研究の多くはP/F 100-150なので、APRVを使用する場合は中等度以上の症例が望ましい

 

<SIMV vs A/C>

推奨を決定できない(in our practice statement)

 

唯一のRCTは単施設n=40。一次アウトカムの酸素化は改善した。死亡やVFDは有意差ないが、二次アウトカムとなっていた。A/C群でミダゾラムの使用量が多い傾向があり影響した可能性がある。

人工呼吸器非同調が多く生じた患者群は有意にSIMVが高い頻度で使用されていた(

    • PMID: 23513248

観察研究)

     ARDS患者に限定しない複数の研究(PMID: 7823995、PMID: 27235318)ではSIMVが他のモードと比較して人工呼吸器離脱に時間がかかった

     

    PSV vs A/C>

    自発呼吸のある患者でPSVとA/Cは推奨を決定できない(in our practice statement)

    良質なエビデンスがない

    状況に応じて選択

     

    <RM>

    日常的に使用しないことを条件付きで推奨 2D

     P/F比の改善とレスキュー治療の回避を目的に、十分な教育と訓練が行われ、循環をモニタリングし、心停止など危機的状況に対応できる場合に考慮しても良い。

     

    ARTstudy(PMID: 28973363)では死亡が増加。これが発表される以前のATS/ESICM/SCCM2017ガイドラインではRMを推奨していた。

    RMの方法が研究間で大きく異なる

    多くが中等度〜重度 ARDSを対象としていた

     

    <人工呼吸器離脱>

    プロトコル化された人工呼吸器離脱法を行うことを条件付きで推奨 2D

     24時間以上人工呼吸器管理を要する成人患者を対象としたRCT

    SBT、段階的なウィーニング、ASVなどプロトコルがアウトカムを改善した

    ARDSを対象としたRCTはない

    患者の異質性、介入の異質性がある

    3学会合同人工呼吸器離脱プロトコルkokyuki_ridatsu1503b.pdfが参考になる

     

    <HFOV>

    中等症以上の ARDS患者にHFOVを実施しないことを条件付きで推奨 2A

    OSCAR 2013(PMID: 23339638)

    OSCILLATE 2013 (PMID: 23339639)

    従来の肺保護換気に比べて生命予後の改善が認められなかった

    全てのアウトカムの点推定値で望ましくない方向性が一致していた

    ATS・ESICM・SCCM2017でもルーチンの使用をしないことを強く推奨

    対象や介入の違いなどから除外したRCTで効果を示唆するものはあり、有効となり得る条件がある可能性はある。

    軽症 ARDSを対象とした研究はない 平均気道内圧が高いモードであり推奨されないと思われる

     

    <駆動圧>

    駆動圧を指標とした人工呼吸器管理を行うべきかは推奨できない。標準的な肺保護換気を確実におこなった上で、CO2上昇や酸塩基平衡異常に注意しながら可能であれば駆動圧を制限する(in our practice statement)

    組入基準を満たすRCTなし

    観察研究もバイアスリスクが高かった

    いくつかの観察研究で低い駆動圧が死亡割合の低下と関連していることが示唆されている

     

    <SpO2目標>

    過度な低SpO2を目標とした管理を行わないことを条件付きで推奨 2D

    至適SpO2は不明 過度な低・高SpO2を避ける

    人工呼吸器を必要とする成人患者を対象とした研究

    必ずしも ARDS患者全般に当てはまらない可能性がある

     ARDS患者のみを対象としたBarrot 2020(LOCO2、PMID: 32160661)

    では死亡率上昇を認めている

    他、代表研究:HYPERS2S 2017Oxygen-ICU 2016:n=434、単施設オープンラベルRCT、保守的酸素療法でICU死亡率が低かった。患者登録困難のため早期中止された。、ICU-ROX 2020

    いくつかの研究ではCOPD患者など高濃度酸素が害となり得る患者は除外されているので、それらの患者に関してこの推奨に含むべきではない。

    今回くみいれられたZhaoらのネットワークメタ解析では至適SpO2に関して、moderate(PaO2 90-150)が予後が良い傾向があった

    少なくとも、通常のSpO2管理 90−98%の範囲内で予後に明確な差が生じる可能性は高いとは言えない

    2021にNEJMから同様のRCTが発表された(HOT-ICU, n=2910、

      • PMID: 33471452)

    が、これを含んでも効果の方向性に変化はなかった。

       

      <筋弛緩薬>

      中等症もしくは重症の成人ARDS患者において、早期に筋弛緩薬を投与することを条件付きで推奨 2D

      投与期間を48時間以内に限定するべき

      海外のRCTで主に使用されたシスアトラクリウムは本邦では発売されていないこと、本法で使用されるロクロニウムなどのアミノステロイド系筋弛緩薬」では代謝が遷延したり筋萎縮作用があることに注意が必要

      ACURASYS 2010(PMID:20843245,n=340、他施設二重盲検RCT、死亡・VFD改善)ROSE 2019(PMID: 31112383, 最大規模のn=1006の中等症以上のARDS患者が登録され、筋弛緩薬は転帰を改善しなかった)

      いずれもP/F150以下の ARDS患者を対象に筋弛緩薬投与を48時間に限定して使用している。

      この2つの結果の相違はコントロール群における鎮静レベルの相違に影響された可能性が考察されている。

      これらのRCTでは筋弛緩モニターを使用せず投与量が固定されて筋弛緩薬が持続投与されていることに注意が必要である。

      SRで、圧損傷が有意に減少。他は有意差なし。

       

      <経肺圧>

      ARDS患者のPEEP設定に経肺圧をルーティンに用いないことを条件付きで推奨 2B

      従来のARDSnetの表に沿ったPEEP決定法と比較したRCTが2件

      EPVent1 PMID: 19001507、n=61パイロット研究、単施設RCT。酸素化とコンプライアンスを有意に改善した

      EPVent2 PMID: 30776290、n=200、多施設RCT。死亡やVFDに有意差なし

      SRでは死亡を減少させる方向性が認められたが有意ではなかった。

      また食道内圧バルーンキットや特定の人工呼吸器が必要であることが考慮された。

      なお食道内圧バルーンキットを使用できる状況下ではその使用を妨げるものではない。

      肥満患者など胸腔内圧が高い患者での比較検討が必要である。

       

      <EIT>

      ARDS患者のPEEP設定に EITを日常的に使用することができない(in our practice statement)

      該当するRCTなし

      Zhaoらの前向き観察研究では重症ARDS患者24名に EITによるPEEP決定を行い、圧外傷は生じなかった。

      本邦で未発売

       

      <肺エコー>

      ARDS患者のPEEP設定に肺エコーを使用するのは一般的ではない(in our practice statement)

      前向き観察研究で、肺エコーでPEEP上昇によるリクルートメントの効果が定量可能であったことなどが報告されているが、重大なアウトカムについて比較する研究はない

       

      <腹臥位>

      中等症および重症の成人ARDS患者において長時間の腹臥位を行うことを条件付きで推奨 2D

      習熟した医療機関で、12時間以上を考慮するべき

      死亡を減少、VFDを増加させる可能性がある。気道や皮膚トラブルを増加させる可能性がある。

      PROSEVA trialPMID: 23688302、他施設RCT、n=466、早期から長時間の腹臥位を行うことで死亡率の減少)では腹臥位群・対照群の両群で筋弛緩薬が併用されていたことに注意が必要

      SSCG2016では敗血症ARDSでP/F150未満の患者に腹臥位を推奨されている

       

      <ECMO>

      重症の成人ARDS患者においてECMOを実施することを条件付きで推奨 2B

      ARDS患者へECMOと人工呼吸器管理のみの比較をしたRCTは2つ

      CESARPMID: 19762075、適応をMurray score <3またはpH <7.2の非代償性高二酸化炭素血症とした。死亡率が有意に減少)

      EOLIAPMID: 29791822、国際的RCT、n=249、適応をP/F 50未満が3時間以上続いた場合、P/F 80未満が6時間以上、または6時間以上持続する動脈血pH7.25未満かつ動脈二酸化炭素分圧60mmHg以上とした。60日死亡率に有意差なし)

       

      MAで優位に死亡率減少。

       

      <早期気管切開>

      成人ARDS患者において早期気管切開を行うことを条件付きで推奨 2D

      多くの研究では人工呼吸開始後48時間〜10日以内と定義されている

      本来気管切開が不要な患者に対する施行してしまう懸念がある

      2016ガイドラインでは行わないことを提案していた

      2015CochraneデータベースのSRと同様のエビデンスの確実性が非常に低く推奨の方向性の決定に苦慮した

      他の疾患にくらべてARDS患者は重症度が高いことに留意が必要

       

      <VAP予防>

      ルーチンのVAP予防バンドルを推奨(in our practice statement)

      ARDSにおけるRCTはない 観察研究がいくつかVAP発生率の低下を報告している

      各国や施設でバンドルの内容が異なる

       

      <トロンボモジュリン>

      推奨を決定できない

      良質なRCTなし

      マウスARDSモデルにおいて生存期間や進行抑制が報告されている

      保険適応外である

       

      <NO>

      ARDS患者にNOを使用しないことを条件付きで推奨 2D

      レスキューセラピーを妨げるものではない

      死亡や腎障害が増えた、人工呼吸器装着日数やICU滞在日数には効果ありとなり

      アウトカムの方向性一致せず

      エビデンスの確実性が低いので、2016の1C→2Dになった

      保険適応外である

      COVIDー19のARDSにおけるNOのRCTが進行中

       

      <シベレスタット>

      ARDS患者にシベレスタットを使用しないことを条件付きで推奨 2D

      4つのRCTのうち3つは小規模なものであり大きな1つも2004年のものである

      2016と変更なし

       

      ステロイド

      成人ARDSに高用量ステロイドを使用しないことを条件付きで推奨 2C

      低用量ステロイドを強く推奨 1B

       

      ステロイドの用量は研究によって様々

      高用量はmPSL 30mg/kg、低用量にはmPSL 1−2mg/kg程度の研究が含まれている。サブグループ解析から、早期にステロイドを開始し、7日以上継続する投与方法の有用性が示唆されている。

      ARDSに対する保険適応はないが重症感染症や感染性ショックに適応があるので実質的にはほとんどの患者で使用できると思われる

      高要領では害が大きい可能性がある

      低容量では死亡、感染、VFD、入院日数などに良い効果がある可能性がある

       

      <鎮静>

      成人ARDS患者の補助療法として無鎮静または浅鎮静管理を行うことを条件付きで推奨

       2D

      深鎮静を必要とする患者を除外して検討された結果だったり、ARDS患者に限った研究はないので注意が必要

      中等症以上のARDSでは深鎮静や腹臥位、筋弛緩薬が使用されるので適応できないことがある

       

      <水分制限>

      成人ARDS患者の補助療法として水分を制限した体液管理を行うことを条件付きで推奨 2B

      水分制限の方法の差異がある。輸液制限や利尿薬の投与、2件のRCTでは制限的な体液管理の方法として腎代替療法を選択している

      RCT3件は浅い鎮静、1件は無鎮静

      残したいゲシュタルト 腎移植後

      尿量に応じて追いかけ輸液

      片腎が生きている人は尿量の判断が逆に難しい

      尿量減少時はエコーでRI確認

      フロセミドいれることあり

      血圧高にすることが多い

      残したいゲシュタルト 血液内科

      化学療法に伴う容量負荷で心不全になり入室するパターンあり

       

      腫瘍崩壊症候群による代謝性アシドーシス、高K、高CK、腎障害

       

      化学療法:どこかでnadirがくる。感染や出血傾向に注意する。

      どれくらいで効果でるか確認。

       

      真菌、CMV、BKウイルスなど日和見感染がよく起こる。

       

      GCSFは白血病のコントロールついていないときはむしろ芽球がでることがあるので注意

       

      血小板輸血しても血小板あがらなくなってきたら抗HLA抗体の出現を考える。その場合、HLA適合血小板が必要になる。

       

      気管切開のタイミングが難しいことあり(血球減少による感染、出血)